2009-9-28

「優しい人」宮台真司

僕の思考には,これまで読んだ無数の言葉が,
ほとんどその原型をとどめぬままに,血肉となって流れ込んでいます。
その中でも,今回,『小論文 時事テーマとキーワード』を書くにあたって,
もっとも直接にお世話になったのが,
首都大学東京教授の宮台真司さんが著わした,
『日本の難点』(幻冬舎新書)です。
 
僕が大学に入学したころ,
宮台さんは『サブカルチャー神話解体』などで注目を浴びつつある,
新進気鋭の社会学者でした。
テレクラにはまる主婦・援交少女・オウムに走る若者,
宮台さんが選ぶテーマはつねに斬新で,
自身のフィールドワークに基づく議論には説得力がありました。
 
一時期は宮台さんの著作をむさぼるように読んでいましたが,
僕はしだいに離れていきました。
現状分析だけでいっこうに処方せんが示されないことや,
強気な物言いで敵を作り続けていることに,
違和感が強くなっていったからです。
 
宮台さんの著作を読んだのは,ほぼ10年ぶりのことです。
〈ひとりで「日本の論点」やってみました〉という
魅力的なキャッチコピーを見たからには,
読まざるを得ませんでした。
そして,僕が勝手に作り上げていた宮台さんのイメージが,
いかに稚拙であったかを思い知らされていました。
 
宮台さんが『日本の難点』で声を大にして訴えかけるのは,
現代日本には人と人のつながりの回復こそが必要だ,ということです。
図らずも,僕が今回のオファーをいただいたとき,
全体を貫くテーマとしておぼろげながらに考えていたものと
一致していました。
もちろん,議論の深さと網羅性は到底及ぶものでなく,
書きながら何度も参照し,僕の思考を導く海図となりました。
 
変な言い方ですが,
宮台さんは「優しい人」なんだなというのが率直な感想です。
世の中には,一人では生きていけない人たちがたくさんいる。
そういう人たちがちゃんと生きていけるように,
セーフティネットを張ることが,
宮台さんの仕事であることにも気付きました。
 
かつての攻撃的な宮台さんが,
子どもを持ったことなどもあり,変わったのでしょうか?
いや,宮台さんはもともと「優しい人」だったのと思います。
だからこそ,テレクラにはまる主婦や援交少女たちの,
叫びにも近い心の声に耳を傾けることができたのでしょう。
 
私の気持ちを聞いてほしい,その声に真正面から向き合うことが,
人と人のつながりを回復する第一歩です。
それを実践してきたのが宮台さんであったということに,
10年近くのブランクをへて,ようやく思いいたりました。
 
ということで,今回小論文の本を書いた一番の収穫は,
宮台さんが「優しい人」であることに気付いた,です。
みなさんもぜひ宮台さんの著作に接して下さい。

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時事テーマとキーワード
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キーワード
《社会科学編》
《看護医療編》

プロフィール

【相澤 理】
(AIZAWA OSAMU)
職業:予備校講師

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相澤 理